氏名

タケダ ナオコ

武田 尚子

職名

教授 (https://researchmap.jp/read0099926)

所属

(人間科学部)

連絡先

URL等

研究者番号
30339527

本属以外の学内所属

兼担

人間科学学術院(大学院人間科学研究科)

人間科学学術院(人間科学部通信課程)

学歴・学位

学歴

東京都立大学 大学院 社会科学研究科 社会学専攻 博士課程

学位

博士(社会学)

所属学協会

日本社会学会

日本都市社会学会

地域社会学会

受賞

地域社会学会賞[個人著書の部]

2011年

日本社会学会奨励賞[著書の部]

2003年

取材ガイド

カテゴリー
社会科学
専門分野
地域社会学、都市社会学、人口学
自己紹介コメント
独自の見地から、専門的にコメントできるのは、「瀬戸内海の歴史的変遷」。離島集落で20数年に及ぶ地道な調査はほとんど他に例がない。「東京の歴史的変遷」についても歴史的資料を踏まえた専門的コメントが可能。とくに2020年の東京オリンピック開催地となるウォーターフロントについては、月島での調査経験を踏まえて、独自の湾岸ストーリーを語ることができる。チョコレートについては、中公新書で『チョコレートの世界史』を刊行し、各種の取材依頼を受けてきた。社会科学の専門的知識をふまえて、スイーツの登場、近現代における食文化の変遷、人々のライフスタイルの変化を語ることができる。
キーワード
チョコレート、食文化と都市、温泉

研究分野

キーワード

社会学(地域社会学、都市社会学)、近現代の地域社会の変容

研究テーマ履歴

人口移動と地域社会構造

個人研究

質的調査方法

個人研究

論文

近代漁業のマクロ構造とローカルな新興漁業経営者層の台頭-大正期における播州室津漁民の朝鮮出漁-

『生活文化史』72p.43 - 722017年-

「アマの領域」のモノグラフ的探究

武田尚子

鳥越皓之・金子勇編『現場から創る社会学理論』ミネルヴァ書房p.113 - 1232017年-

近代新興実業層の経営資源と社会移動プロセス-渋沢栄一「耕牧舎」と芥川龍之介実父の搾乳業経営-

武田尚子

『生活文化史』70p.3 - 772016年-

渋谷道玄坂の変容と地付層-富士講講元・吉田平左衛門家の近世・近代

武田尚子

『生活文化史』68p.19 - 562015年-

質的調査データの二次分析-大正期「月島調査」と労働運動

『日本労働研究雑誌』独立行政法人 労働政策研究・研修機構665p.70 - 802015年-

貧困地域と非識字者への視点:テレビ草創期のNHKドキュメンタリーと地域社会研究

武田 尚子

社会学評論65(4)p.486 - 5032015年-2015年

CiNii

詳細

ISSN:0021-5414

概要:本稿は, テレビ草創期のNHKドキュメンタリー・シリーズの2本の番組を取り上げ, 地域研究資料としての意義を考察した. これらの番組は, 1960年代に広島県因島の家船集落を取材したもので, 漁村の貧困と不就学児童の問題に焦点をあてている. このシリーズは, 民俗学の視点を参照して, 底辺層の生活に迫り, その人々が直面している社会的ジレンマを視聴者に問うという方針で制作された. これとほぼ同時期に, 同じ集落で, 宮本常一が参加した民俗学調査が実施された. これら2つの調査・取材は, いずれも民俗学的関心に基づいて実施されたものであるが, 見出した知見には相違がみられる.テレビ・ドキュメンタリーは, 階層的視点が明確で, 貧困地域という集落特性を映像で実証的に示している点に意義がある. これによって, ミクロな地域社会の事象をマクロな社会構造に位置づけてとらえることが可能になった. しかし, その一方で, 民俗学調査報告書と比較すると, テレビ・ドキュメンタリーは, 該当地域に居住していた非識字者を貧困の視点でとらえる傾向がつよく, 非識字者の集団が保持していた口承文化の豊かさについて, 理解が浅い面があったことがわかる.以上のように本稿は, 民俗学調査と比較することによって, テレビ・ドキュメンタリー番組を地域資料として利用する場合の長所および留意点を明らかにしたものである.

「映像資料と社会調査方法−初期テレビ・ドキュメンタリー『日本の素顔』の取材対象と方法−」

武田尚子

『武蔵大学総合研究所紀要』22p.1 - 222013年-

「ロウントリーの第二次ヨーク貧困調査と〈ベヴァリッジ・レポート〉への貢献」

武田尚子

『ソシオロジスト』15p.47 - 942013年-

「ロウントリーの都市貧困調査:食品化学実験からの出発−近代イギリスにおける「効率性」の探求−」

武田尚子

『ソシオロジスト』14p.1 - 342012年-

「特集論文 質的調査データのアーカイブと二次分析(1):イギリスの事例」

武田尚子

『社会と調査』一般社団法人社会調査協会8p.31 - 372012年-

「近代東京における軍用地と都市空間−渋谷・代々木周辺の都市基盤の形成−」

武田尚子

『武蔵大学総合研究所紀要』21p.47 - 662012年-

「8章 近代の都市化と工業地域の形成:月島の出現」「9章 住商工地域の生活世界と文化的資源:もんじゃの進化」「10章 都市再開発とローカル・アイデンティティの変容:もんじゃの街」

武田尚子

森岡清志編『都市社会の社会学』放送大学教育振興会p.107 - 1502012年-

'Ray Pahl's Sociological Career: Fifty Years of Impact'

Crow, Graham & Takeda Naoko

Sociological Research Online16 (3)-112011年-

「B.S.ロウントリーの田園ビレッジ建設と田園都市運動−イギリスにおける貧困研究と住宅問題の関連−」

武田尚子

『ソシオロジスト』13p.53 - 782011年-

「拡大する瀬戸内漁民の世界」

武田尚子

『歴博』国立歴史民俗博物館168p.7 - 102011年-

「戦間期イギリスにおける「科学的管理」の導入−ロウントリー社における産業心理学の導入と労働インセンティブ−」

武田尚子

『年報 科学・技術・社会』19p.53 - 782010年-

「東京の〈冒険遊び場〉と担い手−都市空間とジェンダーの歴史社会学−」

武田尚子

『季刊 家計経済研究』87p.42 - 502010年-

「宮本常一の西日本社会論 −「合理性」への関心と村落社会構造の把握−」

武田尚子

『ソシオロジスト』12p.1 - 262010年-

「産業開発と排除される漁業者」

武田尚子

玉野和志・浅川達人編『東京大都市圏の空間形成とコミュニティ』古今書院p.117 - 1432009年-

「月島調査データの2次分析−駄菓子屋の社会地図と権田保之助の民衆娯楽研究」

武田尚子

『ソシオロジスト』11p.1 - 292009年-

「一九二五〜四〇年のマニラ湾における日本人漁業−漁業技術と排日−」

武田尚子

蘭信三編著『日本帝国をめぐる人口移動の国際社会学』不二出版p.753 - 7792008年-

「グローバリゼーションとローカリティ−東京・月島のもんじゃの事例−」

武田尚子

白水繁彦編著『移動する人々・変容する文化』、御茶の水書房p.141 - 1612008年-

「都市社会学からwork論への転回−Ray Pahlの軌跡とイギリス社会学へのインパクト」

武田尚子

『ソシオロジスト』10p.19 - 492008年-

"Mega-city and Mega-projects: The impact on a Working-Class Residential Area in Greater Tokyo"

Naoko Takeda

Journal of Musashi University Research Center17p.65 - 772008年-

「グローバル・イッシューへの取り組みを支えるローカルな基盤−従軍慰安婦問題を支援するローカル・グループの事例−」

武田尚子

『武蔵大学総合研究所紀要』16p.83 - 1012007年-

「受苦圏の認知と地域社会−広島県内海町におけるLPG基地建設反対運動の事例から−」

武田尚子

『ソシオロジスト』9p.167 - 1942007年-

「移民経験者と家族のキャリア・コース −地元漁業からの離脱−」

武田尚子

『移民研究年報』12p.141 - 1532006年-

「造船業下請企業経営者層の形成と地域社会−広島県内海町を事例に−」

武田尚子

『地域社会学会年報』18p.79 - 1022006年-

「社会学教育の多様性とテキスト」

武田尚子・今野裕昭

『社会学評論』56(3)p.664 - 6842006年-

「サービス業就業者特化地域の形成 −箱根町と熱海市の事例から−」

武田尚子

『ソシオロジスト』8p.89 - 1222006年-

「祭礼の変容と地域社会 −福山市内海町の事例から−」

武田尚子

『ソシオロジスト』7p.191 - 2162005年-

「空間再編成への関与 −地域工業団体の性格の変容−」

武田尚子

『ソシオロジスト』6p.21 - 422004年-

「落書き問題と地域社会の対応 −地域空間の管理をめぐって−」

武田尚子

『ソシオロジスト』5p.49 - 662003年-

「村落から工業都市への変容 −宇部における企業経営者層の形成−」

武田尚子

『年報社会学論集』13p.215 - 2262000年-

「地域のアイデンティティの形成−マニラへの移民送出の村(広島県沼隈郡田島村)を事例に−」

武田尚子

『社会学評論』50(3)p.117 - 1321999年-

「都市流入者と出身地域という属性−広島県沼隈郡内海町出身者の大阪における同郷団体−」

武田尚子

『日本都市社会学会年報』17p.55 - 711999年-

「明治20年代の移民問題と地方問題−殖民協会の設立と移民保護規則制定の過程から−」

武田尚子

『社会学論考』19p.47 - 671998年-

「移民をめぐる言説 −大正年間の地方改良運動との関連から」

武田尚子

『年報社会学論集』11p.155 - 1661998年-

「マニラの都市貧困地域における親族ネットワークと自助開発活動」

武田尚子

『年報社会学論集』7p.49 - 601994年-

書籍等出版物

『荷車と立ちん坊 -近代都市東京の物流と労働-』

武田尚子

吉川弘文館2017年-

『ミルクと日本人-近代社会の「元気の源」-』

武田尚子

中央公論新社2017年-

『20世紀イギリスの都市労働者と生活−ロウントリーの貧困研究と調査の軌跡』

武田尚子

ミネルヴァ書房2014年-

『海の道の三〇〇年 −近現代日本の縮図 瀬戸内海』

武田尚子

河出書房新社2011年-

『瀬戸内海離島社会の変容−「産業の時間」と「むらの時間」のコンフリクト』

武田尚子

御茶の水書房2010年-

『温泉リゾート・スタディーズ−箱根・熱海の癒し空間とサービス・ワーク』

武田尚子・文貞実

青弓社2010年-

『チョコレートの世界史 −近代ヨーロッパが磨き上げた褐色の宝石−』

武田尚子

中央公論新社2010年-

『質的調査データの2次分析−イギリスの格差拡大プロセスの分析視角』

武田尚子

ハーベスト社2009年-

『もんじゃの社会史 −東京・月島の近現代の変容−』

武田尚子

青弓社2009年-

『マニラへ渡った瀬戸内漁民 −移民送出母村の変容−』

武田尚子

御茶の水書房2002年-

外部研究資金

科学研究費採択状況

研究種別:

近代の都市形成と軍用地-戦争アーカイヴ活用による歴史社会学的研究

2014年-0月-2018年-0月

配分額:¥4680000

研究種別:

都市における中間層の変容過程と社会調査:格差社会分析の国際比較のための実証研究

2009年-0月-2013年-0月

配分額:¥4290000

研究種別:

瀬戸内海離島出身者の地域移動とネットワーク:地域社会の変容に関する実証的研究

配分額:¥3750000

研究種別:

現代日本における都市下層の動態に関する実証的研究

配分額:¥14100000

研究種別:

大都市郊外の歴史的変遷と地域変容の実証的研究

配分額:¥1500000

研究種別:

近現代都市における貧困の重層化プロセスと社会政策に関する歴史社会学的研究

2018年-0月-2022年-0月

配分額:¥4420000

研究種別:

大都市部における格差拡大の進行過程とその社会的帰結に関する計量的研究

2015年-0月-2019年-0月

配分額:¥42640000

学内研究制度

特定課題研究

近現代都市における貧困の重層化プロセスと社会政策に関する歴史社会学的研究

2018年度

研究成果概要: 本研究は、国内では東京都心部、国外ではイギリスのヨーク市の2カ所を調査対象地とし、歴史的アーカイブを用いた質的調査方法によって、貧困の重層化が生じるプロセスを明らかにした。どちらの地域においても近代の都市化の時期に、遷移地帯で貧... 本研究は、国内では東京都心部、国外ではイギリスのヨーク市の2カ所を調査対象地とし、歴史的アーカイブを用いた質的調査方法によって、貧困の重層化が生じるプロセスを明らかにした。どちらの地域においても近代の都市化の時期に、遷移地帯で貧困層が集積した。そのような地域で貧困対策が実施されたことによって、極貧状況は解消されたが、低所得層の集積は存続した。居住環境の地理的特徴などにより、狭小区画などが存続し、居住人口は流動しているが、低所得層を吸引する要因が持続した。この結果、社会関係、生活様式にも一定の特徴を帯びた地域となり、再開発時代においても再び低所得層が集積しやすい状況にあると考えられる。

近代の人口移動と都市形成に関する実証研究

2013年度

研究成果概要: 本研究の目的は、「近代の人口移動と都市形成」をテーマに、近代都市の空間形成をめぐる人口的要因、軍事的要因について実証研究を進め、近代の都市計画との関連性について明らかにすることであった。国際的な比較研究の可能性を探るため、201... 本研究の目的は、「近代の人口移動と都市形成」をテーマに、近代都市の空間形成をめぐる人口的要因、軍事的要因について実証研究を進め、近代の都市計画との関連性について明らかにすることであった。国際的な比較研究の可能性を探るため、2013年10月27日~11月4日まで、イギリスのロンドンへ研究出張し、ロンドンのThe National Archives(国立公文書館)で、第一次大戦期におけるイギリスの人口移動と都市の軍需工場に関する資料の収集を行った。 この研究出張によって、イギリス国立公文書館の資料を用いて、第一次大戦下のイギリスにおける軍需工場の女性労働者の実態と近代の都市形成の関連を明らかにし、国内および国外の多様なアーカイブの相互参照を進めて、国際比較できる可能性が高いことが明らかになった。 現段階では、イギリス国立公文書館の資料に基づいて、おおよそ以下のことが明らかになった。ロンドンに立地していた軍需工場の福祉面を管理していたのは、軍需省福祉部である。軍需省福祉部は、1915年12月の年末に設置された。ロイド・ジョージが軍需大臣の時期である。軍需物資の生産、検査に関わるすべての機関において、十全の労働環境が確立・維持されることを目的としていた。 当時、軍需工場はかなりアブノーマルな労働環境だった。軍需物資の生産のために、本来の用途とは異なる利用・転用が広がっていた。そこへ大量の女性労働力が投入された。もともと男性労働者だけを前提としていた労働環境で、食堂やロッカー室などの設備や、通勤手段が整わないうちから、軍需物資の増産要求が加速、生産目標を達成するように厳しいプレッシャーがかかった。供給部からの緊急要請が入るなど、工場の操業はフル回転し、工場経営者・管理者は労働者の健康や福祉まで配慮する余裕がない状態が続いた。 軍需大臣はこの状態を早く解消しなければ、生産効率が悪い上に、労働者に軍需工場で働くことを忌避されることを懸念した。 1915年7月に「戦時軍需産業法(the Munition of War Act)」が制定され、軍需大臣は国営工場を管理する権限を有するようになった。1916年に「戦時軍需産業法(改訂)(the Munition of War Act -Amendment)」が制定され、軍需大は軍需省の管理工場についても権限を有することになった。政府は大量の労働力を雇用するとてつもなく大きな組織になったので、ロイド・ジョージは軍需省管理下の国営工場・管理工場の労働環境を高水準にすることは不可避の問題ととらえていた。女性の労働環境向上が緊急課題であるととらえていたが、ロイド・ジョージは福祉部の業務について、具体案をもっているわけではなかった。 軍需工場の女性労働者の前職であるが、1918年時点で18~23歳だった女性の場合、戦争前に就いていた前職は工場労働者が約3割である。23~27歳女性の場合も、民間工場・軍需工場を合わせると50%が工場労働経験者である。召使など家事サービス労働の経験者も22.73%に及ぶ。軍需工場で働いていた女性は、労働者階級の出身である。

中間層をめぐるセーフティネットの変容と地域社会

2013年度

研究成果概要: 本研究では、2013年8月、9月上旬、9月下旬の3回、広島県因島箱崎地区において、漁業者集団のセーフティネットの中核になっていた児童養護施設「湊学寮」の入寮者にインタビュー調査を実施した。 その研究成果は、2013年10月13... 本研究では、2013年8月、9月上旬、9月下旬の3回、広島県因島箱崎地区において、漁業者集団のセーフティネットの中核になっていた児童養護施設「湊学寮」の入寮者にインタビュー調査を実施した。 その研究成果は、2013年10月13日、第85回日本社会学会大会(慶應大学)において、「瀬戸内漁民と口承文化-尾道市因島地区における家船の生活経験と歌謡」として学会報告を行った。発表要旨は以下の通りである。1. 瀬戸内海の家船集団の末裔 広島県の因島(いんのしま)土生町箱崎地区(現・尾道市)は、1970年頃まで家船の生活様式を残していた漁業集落である。当時、家船の根拠地は瀬戸内に3カ所程度を残すのみで、宮本常一率いる調査班も緊急調査を実施し、独特の生活習慣を書きのこしている。 水上生活に子どもを同伴していたため、当時でもなお未就学児童がおり、伝統的に非識字率の高い地域社会が形成されていた。因島土生町には戦前から日本の代表的な大造船所が立地していたため、第一次産業就業者の分解は戦前期に進行し、島社会の上層に位置するのは造船業経営者・就業者だった。同一町内に隣接して居住しているにも関わらず、非識字者が多かった漁民層は底辺に位置づけられていた人々である。 家船の居住形態は1970年代に消えたが、家船の生活経験をもつ住民は現在でも当該地区に多数居住している。家船の生活様式が反映された口承文化は、いまもなお地域社会の伝統行事の際に発揮される。本報告は、漁民集団に特徴的な海の労働によって培われてきた歌謡を切り口に、かつての家船の生活経験や生活様式が、歌謡の継承にどのように反映され、伝統的な地域行事の存続に寄与しているのかについて考察する。 2. 口承文化と歌謡 現在でもなお口承文化が顕在化する場面として、氏神神社の祭礼のクライマックスである曳舟神事を挙げることができる。家船集団の末裔たちが船を陸に曳き上げ、神社の階段を担ぎ上げる祭事で、漁民の団結力を示し、ローカル・アイデンティティを実感する機会である。重量のある船を持ち上げるため、漁民のリーダーが音頭を朗唱して、担ぎ手たちの息を合わせる。独特の「節まわし」と「ことば」を身体化した歌謡の伝承者は、絶妙な息づかいで、パフォーマンスを成功に導く。歌謡は文字に頼らず、特定の親族に口伝えで伝承されてきたものである。 因島の箱崎地区の漁民集団にとって、口承の歌謡は集合的経験・記憶の形成と密接に関連している。非日常的な経験・記憶に該当する祭事のほか、口承の歌謡が漁民集団の一体感を盛り上げた日常的な場面として人々が語るのは、1990年代も頻繁にあった新造船を祝う宴席のことで、口承歌謡のおもしろさ・楽しさを実感する機会になっていた。 口承歌謡の魅力は、「替え歌」の巧みさにあった。ここで歌われたのは、漁労と密接に関連する大漁節など、海の労働によって伝承されてきた歌謡である。「節」と「ことば」の一致を自家薬籠中のものにしている熟練者が、次から次へと「うた」を繰り出し、記憶量と節回しの巧みさで若年者を圧倒する。当意即妙で「ことば」を入れ替えて、機知・機転を競い合う「替え歌」の披露が始まる。即興歌のスリル感で「場」を盛り上げ、かつ労働歌を共有している一体感を醸成できるのは、「節」と「ことば」の扱いに慣れて身体化している者である。「うた」によって、場をコントロールする高度のテクニックをもつ者の多くは非識字者だった。3. 労働と知恵の集積 家船漁民は海上で家族生活を営んでいたため、労働形態は夫婦単位で、漁民仲間との共同作業の場面は少なかった。しかし、日常の海上経験は、陸上における漁民仲間と繰り広げる「替え歌」合戦や、非日常の祭事の場面に反映された。海の労働経験で培われた知恵の集積が、口承文化の継承に寄与し、漁民仲間の連帯感を養い、生活保障を補強する独特の機能を果たしていたことを知ることができる。

人口移動と地域社会:セーフティネットの変容をめぐる国際比較研究

2013年度

研究成果概要: 本研究の目的は、人口構成がダイナミックに変動する日本の地域社会において、地域住民が保有するインフォーマルなセーフティネットがどのように変化しているのか、その変化の動態を明らかにすることであった。調査対象地として、1957~64年... 本研究の目的は、人口構成がダイナミックに変動する日本の地域社会において、地域住民が保有するインフォーマルなセーフティネットがどのように変化しているのか、その変化の動態を明らかにすることであった。調査対象地として、1957~64年制作のNHKドキュメンタリー・シリーズ『日本の素顔』で、取材対象として取り上げられてた広島県尾道市因島地区を選び、漁業者集団のセーフティネットの中核になっていた児童養護施設「湊学寮」の入寮児童と家族の50年間の家族史を調査するための予備調査を行った。 2013年6月と7月の2回、因島箱崎地区へ研究出張し、当時の入寮児童がどの程度、この地域に居住しており、インタビュー調査が可能であるかを探った。 また、テレビドキュメンタリーの草創期の『日本の素顔』の取材対象に着目する理由を調査方法史のなかに位置づけて、研究の意義を明らかにするため、第31回 日本都市社会学会(2013年9月14日熊本大学で開催)において、「映像がとらえた格差-高度経済成長初期のテレビドキュメンタリー」と題する学会報告を行った。  この学会報告の発表要旨は以下の通りである。1957~64年にNHKで制作されたドキュメンタリー・シリーズ『日本の素顔』に着目するのは、次のような理由による。社会調査方法史上に映像アーカイヴ資料を位置づけることは重要な作業である。しかしながら、「広い意味でのビジュアル・メソッドは、従来の社会調査ないし社会学の研究では軽視されてきた」(後藤範章, 2010,「ビジュアルな記録を利用する」『よくわかる社会調査 プロセス編』ミネルヴァ書房:186-187)という状況と関連して、過去の映像資料が、社会調査方法上、どのような意義を有するかという検討は充分になされてはいない。研究という意識で制作されたわけではない映像資料であっても、包括的な視点でとらえて、社会調査方法上の学ぶべき点を抽出することには意味があると思われる。 『日本の素顔』は、テレビドキュメンタリーの嚆矢として著名な番組である。地域間格差、漁業・漁村、炭鉱、鉱山、貧困、差別、病気、エスニシティ、公害、社会福祉、子ども、土地、農業・農村、独自集団、民俗、慣行、労働、伝統、移民、災害など、社会の諸領域における底辺層の生活や、独自の慣習を残す集団など、成長から取り残されつつある層の生活に積極的に焦点を当てている点に特徴がある。『日本の素顔』は高度経済成長初期という特定の時期に、均質とはほど遠い日本社会の状況や、共時的に発生している異質性を記録し、文書資料には残りにくい社会の底辺層の実在を映像によって実証している点に歴史的映像資料としての価値がある。社会調査史では、底辺層を調査した先駆に明治期の貧民ルポルタージュの系譜があるが、これらはもともと新聞記者出身者によってジャーナリズムの著作として、一般向けに出版されたものである。『日本の素顔』の場合も、撮影カメラという新たな技術の普及が「社会観察」の方法を刺激し、文書資料には残りにくい領域の探索を促した例の一つととらえることができる。 このような関心に基づいて、番組のなかで因島土生町に設置されていた漁業者の子どもたちの生活改善、就学を促進するための児童養護施設が取材対象として選ばれ、漁業者の日常生活やセーフティネットの状況が映像記録が残されたということが明らかになった。

近代の都市形成と軍用地-戦争アーカイヴ活用による歴史社会学的-

2016年度

研究成果概要: 本研究では、明治11年(1878)3月、渋沢栄一(第一銀行頭取)、益田孝(三井物産社長)、小松彰(東京株式取引所頭取)の3人が連名で、内務省勧農局にメリノー種の羊500頭の拝借を願い出た件に関して、軍需工業の原料調達がその目的で... 本研究では、明治11年(1878)3月、渋沢栄一(第一銀行頭取)、益田孝(三井物産社長)、小松彰(東京株式取引所頭取)の3人が連名で、内務省勧農局にメリノー種の羊500頭の拝借を願い出た件に関して、軍需工業の原料調達がその目的であったことを明らかにし、近代都市の軍用地における軍需工場稼働のプロセスを分析した。 毛織物工業の創業は内務卿大久保利通によってで国策として進められ、渋沢・益田が緬羊事業を計画した明治11年は、千住製絨所の開業が目前で、原料羊毛の調達が内務省の重要な課題だった。利権を獲得し、近代新興実業層が成長するルートの一つになった。

近代都市形成と軍用地-戦争アーカイヴ活用による歴史社会学的-

2017年度

研究成果概要: 本研究では、歴史的アーカイブを用いた質的調査方法により、軍用地、軍施設と近代東京におけるアンダークラス集積地域の形成要因を探った。明治20年代に東京の三大貧民窟の一つ四谷鮫ケ橋に特徴的だった「残飯屋」の存在に着目し、防衛省防衛研... 本研究では、歴史的アーカイブを用いた質的調査方法により、軍用地、軍施設と近代東京におけるアンダークラス集積地域の形成要因を探った。明治20年代に東京の三大貧民窟の一つ四谷鮫ケ橋に特徴的だった「残飯屋」の存在に着目し、防衛省防衛研究所所蔵資料、東京市社会局刊行物、明治・大正期の新聞資料などに基づき、明治期の四谷鮫ケ橋東京西部に布置された陸軍施設との関連について明らかにした。

現在担当している科目

科目名開講学部・研究科開講年度学期
人口学人間科学部2019秋学期
専門ゼミII (人口研究)人間科学部2019秋学期
人口社会学 01人間科学部(通信教育課程)2019秋学期
人口社会学研究指導 A大学院人間科学研究科2019春学期
人口社会学研究指導 B大学院人間科学研究科2019秋学期
人口社会学ゼミ(1) B大学院人間科学研究科2019秋学期
人口社会学ゼミ(2) B大学院人間科学研究科2019秋学期
現代日本の都市空間と格差大学院人間科学研究科2019秋クォーター
人口社会学研究指導(D) A大学院人間科学研究科2019春学期
人口社会学研究指導(D) B大学院人間科学研究科2019秋学期

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科目名学部公開年度